迷 走(高 校 生 時 代 ⑥)編

meisouhen

【めもあある漫画館】

〔 時 空 の 穴 〕

高校卒業後の進路をどうするか?
大学進学は考えたことも無く(当時、工業高校から大学へ行く人は、ほとんど無い時代でした)
虫プロは倒産してしまったし、漫画家のアシスタントなんて到底無理。無職のまま漫画の勉強するのも非現実的で親が許すはずもありません。
幸い、高校三年間の成績は上位をキープしていたので「ヨシ!働きながら漫画家を目指そう」と相成ったわけである。

当時の求人先は、石油コンビナートや化学繊維会社、製薬会社など多種にわたっており検討した結果、杏林製薬株式会社の入社試験を受けることになりました。試験は東京の本社で実施するのですが、それまで一人で福島県外に出たことがなかったので、不安と緊張で落ち着かない毎日。また、試験の前日に行かないと間に合わないので、本社の求人担当の方に旅館を手配していただいたのですが、こちらも一人で宿泊したことがなくドキドキ。
そんな状態のなか、ついに東京へ行く日が来たのです。

「めざせ!東京都千代田区神田駿河台」
会津若松駅から急行「ばんだい」に乗り、終点の上野駅へ(当然、新幹線などありません)
上野駅から京浜東北線に乗り換えて秋葉原駅へ(順調、順調)
秋葉原駅から総武線に乗り換え、最終目的駅のお茶の水駅に到着。
「よかったー、なんとか無事に着いたぞ」と安堵したのでした。

とりあえず本社と旅館の場所を確認し、まだチェックインまで時間があるので、神田の町をブラブラすることにしました。人混みに圧倒されながら適当に歩いていると、突然、本屋の看板だらけの道路に出たのです。そこが神田古書店街であることは後で知ったのですが、会津若松の本屋とは比べようがないほどの漫画本が多数揃っており、歓喜したのを覚えています。
その後、旅館にチェックインし、ほとんど眠れないまま試験当日を迎えたのでした。

試験は筆記試験と面接試験があり、なんとか筆記試験をこなし、面接試験になりました。一応、面接の予行練習をしてきたので順調に進んだのですが、最後に一人の面接官から「尊敬する人物は誰ですか?」と質問されたのです。


僕は心の中で「アチャー、一番聞かれたくないものを聞かれてしまった。どうしよう」と思ったのですが、意を決してこう答えたのです。「ハイ、手塚 治虫です!」
この瞬間、終わったな・・・と観念しました。多分、面接官は「高校三年生にもなって漫画が好きなんて、幼稚な奴だ」と思ったに違いありません。そのまま面接試験は終了し、僕は意気消沈したまま古書店街で「人造人間キカイダー」の単行本を購入し、会津若松へ帰っていったのです。

それから数日たったある日、杏林製薬株式会社から学校へ〔採 用〕の通知が届いたのでした。
凄いぞ!手塚先生
ありがとうございました
僕は、心の中で感謝し、改めて手塚先生の偉大さを痛感したのでした。

次回から〔杏林製薬 編〕がスタートしますが、そろそろ今年度の一コマ漫画の各コンテストが始まるので、しばらくの間、ブログを休止したいと思います。
ただし【めもあある漫画館】は定期的にアップしますので、作品をお楽しみくださいネ。

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