※しつこいようですが、登場人物は全て仮名です。
このへんで工場の組織を簡単に説明しておきましょう。
製造部門は1課と2課に分かれており、1課は注射薬を、2課は経口薬を製造しています。その他に品質管理課、庶務課などがあり、社員研修後にそれぞれの課に配属されるわけです。
話を戻しますが、研修期間中に寮の歓迎会があり、そのなかで「会津出身の先輩達は全員2課に配属されているので、松本君も2課じゃないか?」との話があったので、自分でもすっかりその気になっていました。ところが研修終了後にそれぞれ配属先が発表されたのですが、なんと!僕は1課の調剤に配属されたのである。アッと驚くタメゴロー!(古~)
調剤とは、作業標準書通りに原料を正確に秤量し、蒸留水で溶解、濾過した薬液を、次の工程に渡すまでが仕事です。職場は責任者の佐瀬職長、3年先輩の野口さん、1年先輩の大林さんに僕を加えた4名体制で作業することになったのですが、漫画家になるまでの腰掛け程度の仕事と考えていた僕はミスを連発し、職長及び先輩達に多大な迷惑をかけることになるのである。その中でもいま思い出しても顔から火が出るほど恥ずかしかった話をひとつ。
やっと仕事に慣れた頃、原料の注文を任せられました。野口さんが1ヶ月分の原料の必要量を計算し、それをもとに僕が業者に注文し納品してもらうのですが、野口さんから渡された計算書に化学式でNaHCO₃と書かれていたのです。
『エヌエーエッチシーオースリーって・・・アレ、何だっけ?』
簡単な化学式なのに名前がどうしても出てきません。曲がりなりにも化学を専攻してきたのに『お前は馬鹿か?』と自分を責めたのでした。

そしてさんざん悩んだ末、恥を忍んで野口さんに恐る恐る聞いたのです。
「アノー 野口さん。これって何でしたっけ?」
野口さんは呆れたように「ハア? 炭酸水素ナトリウム(重曹)だよ」
ガビーン!(そうだ、そうだべ。ハハハ・・・汗)
そんなことを繰り返すうちに、さすがにこれはマズイと感じ始めていました。中途半端な気持ちで仕事をしていては会社や職場の人達に大変失礼だし、この程度の仕事しか出来ないと思われるのが嫌だったのです。『このままでは絶対ダメだ。自分を変えなくては』と一大決心したのである。
〔人は簡単には変われない〕とよく言われますが
自分の中で何かが変わっていくことを、ヒシヒシと感じていました。
今回は漫画から離れた話になりましたが、次回から本題に戻りますのでお楽しみに!
【めもあある漫画館】
〔 余 計 な お 世 話 〕



コメント