杏 林 製 薬 ⑦ 編

hourouhen

手塚先生に会えて強烈な刺激を受けた僕は、さっそく漫画を描き・・・はじめませんでした~。
色々な言い訳を自分に言っては、先延ばしにしたのである。
 『だって二人部屋だから、夜中に描くと迷惑だろう』
 『まだ仕事を覚えている最中だし、漫画どころじゃないよ』
 『これから描く時間はたっぷりあるから、そんなに焦る必要はないよ』

さすがヘタレ野郎です。変わっていません(笑)
仕事と生活に慣れるにつれて、どんどん漫画から離れていくのを感じていましたが、それでも漫画本を買うのだけは継続していました。

そんなある日、虫プロダクションの建物が取り壊されるとのニュースを見た僕は、無くなる前に見ておきたい衝動にかられ、東京都練馬区富士見台へ向かいました。そこは住宅街で、なかなか見つからずウロウロしていたのですが、突然、その建物が目に飛び込んで来たのです。

           2012年発行 季刊誌[松本会陽マンガの細道]より抜粋
 『アー、これが子供の頃から憧れていた虫プロダクションか』
 『倒産しなければ今頃入社していたかもしれないのに・・・』
 『涙が出てきた』

感無量の状態で建物の前をしつこく往復した後、帰路についたのである。
「さらば!虫プロダクション」
※もっとも、その後も建物は取り壊されることなく存続した様です(アレ?)

19歳になった僕は、仕事にもすっかり慣れ、私生活も充実していました。職場の1年先輩大林さんや高校の1年先輩風間さんに大変良くしてもらい、休日はドライブや釣りに行ったりして青春を謳歌していたのである。その反面、心の奥では『このままでいいのか?』『おまえは漫画家になりたかったんじゃないのか?』という思いをずっとひきずっていました。
「ヨシ、決着をつけよう!」
自分で決断できないのであれば出版社に原稿を持ち込み、少しでも可能性がある事を言ってもらえたら、おもいきって会社を退職し、漫画に専念しようと決心したのである(何たる無謀)
同室の森田君に「夜中に電気スタンドを使うので、迷惑だと思うがカンベンして」と話すと快諾してくれたので、なんとか15ページの原稿を完成させることが出来ました。
 『さて、どの出版社に持っていこうか?』
 『少年ジャンプの集英社は、なんか怖そうなのでやめておこう』
 『となると少年サンデーの小学館がいいかな・・・ヨシ、小学館に決定!』

さっそくアポをとり、電車で東京の水道橋駅へ向かったのでした。

小学館は、すばらしく立派な建物で、応接室の様な部屋に通された僕は、緊張と逃げ出したい気持ちを必死にこらえていました。やがて一人の男性が入って来て
「じゃあ、原稿を見せてもらおうかな」
「はい、お願いします」
しばらパラパラと原稿をめくった後、おもむろに
「君は今、なにか仕事をしているのかい?」
「はい」
「では、今の仕事を頑張りなさい」
その瞬間、目が回るような感覚になったのを今でも鮮明に覚えています。

『終わった・・・終わってしまった』
もっとも、やっつけで描いた原稿が認められるはずがなく、更に子供のころ夢中になった漫画の画風のまま、まったく成長していなかったのである(当時、劇画ブームの真っ只中)
僕って、思ったほど漫画が好きじゃないんじゃないか?
そんなことを考えながら、気が付いたら野木駅に立っていました。

こうして僕の漫画家になる夢は終了したのである。
街には、太田裕美の『木綿のハンカチーフ』が流れていました。

【めもあある漫画館】

〔 ダジャレ漫画 名曲 サボテンの花 〕
ヒント:歌っているグループの名前は? 

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